住宅ローンは変動金利と固定金利どっちが良い?メリット・デメリットと将来の返済リスク
2026.01.01
住宅ローンという、人生における最も大きな経済的決断の一つに向き合う際、金利タイプの選択は将来の家計を左右する極めて重要な要素となります。
特に、変動金利と固定金利のどちらを選ぶべきか、あるいはそれらを組み合わせるべきかについては、多くの方が悩まれることでしょう。
それぞれの金利タイプが持つ特性を理解し、将来起こりうる金利変動のリスクと、それに伴う返済額の変化を具体的に想定することで、ご自身のライフプランに最も合致した、後悔のない選択へと繋げることが可能になります。
□住宅ローン金利変動と固定の選び方
*変動金利のメリット・デメリット
変動金利型住宅ローンは、市場金利の動向に応じて半年ごと、あるいは1年ごとに適用金利が見直されるタイプのローンであり、その最大の魅力は、一般的に固定金利型と比較して当初適用される金利が低く設定されている点にあります。
これにより、借り入れ当初の月々の返済負担を軽減できる可能性が高まり、特に金利が低下局面にある際には、返済額が減少する恩恵を受けることも期待できます。
しかしながら、この金利タイプには将来的な金利上昇リスクが内在しており、もし市場金利が上昇すれば、それに連動して適用金利も上昇し、月々の返済額や総返済額が増加してしまうという大きなデメリットが存在します。
金利上昇時には、返済額の増加が家計を圧迫する可能性も考慮しなければならず、将来の返済額が不確定であるという点は、慎重な検討を要する要素となります。
*固定金利のメリット・デメリット
固定金利型住宅ローンは、契約期間中、あるいは返済期間全期間を通じて、適用金利が一定に保たれるローン商品です。
このタイプを選択する最大のメリットは、将来の金利変動リスクから解放され、毎月返済する金額が契約終了まで変わらないという安心感にあると言えるでしょう。
これにより、長期的な家計計画を立てやすくなり、収入の変動などに対する備えとして、精神的な安定をもたらす効果も期待できます。
一方で、固定金利型は一般的に変動金利型よりも当初の金利設定が高めに設定されている傾向があるため、同じ借入額であっても、変動金利型に比べて当初の月々の返済額が高くなる可能性があります。
また、もし将来的に市場金利が大きく低下したとしても、固定金利で契約している場合はその恩恵を受けることができないという点も、考慮すべきデメリットとなります。
*どっちを選ぶかの判断基準
変動金利と固定金利のどちらを選択するかは、個々の借り手の経済状況、リスクに対する考え方、そして将来のライフプランによって大きく左右されます。
まず、ご自身の収入が将来的に安定して増加していく見込みがあるか、そして万が一金利が上昇して返済額が増加した場合でも、家計への影響を吸収できるだけの余裕があるかを慎重に評価することが重要です。
リスクを極力避け、返済計画の確実性を最優先したいと考えるのであれば、当初の金利はやや高めであっても、返済額が一定に保たれる固定金利型、特に全期間固定金利型が適している可能性が高いでしょう。
一方で、借り入れ当初の負担を抑えたい、あるいは将来的な金利低下の恩恵を受けたいと考えるなら、変動金利型が有力な選択肢となりますが、その場合は金利上昇リスクへの備えを万全にしておく必要があります。
また、将来の転居や繰り上げ返済の予定なども含めて、総合的に判断することが賢明です。
□金利タイプ別将来の返済額変動リスクの評価方法
*金利上昇時の変動金利の返済額シミュレーション
変動金利型住宅ローンにおいて、将来的な金利上昇が返済額に与える影響を具体的に把握することは、リスク管理の観点から非常に重要です。
例えば、借入額3,000万円、返済期間35年、当初金利0.6%(月々約84,788円、総返済額約3,561万円)でローンを組んだ場合を想定してみましょう。
もし市場金利が上昇し、適用金利が1.6%(+1.0%)に上昇した場合、月々の返済額は約97,072円(+約12,284円)、総返済額は約4,077万円(+約516万円)となります。
さらに金利が2.6%(+2.0%)に上昇すると、月々の返済額は約110,568円(+約25,780円)、総返済額は約4,644万円(+約1,083万円)へと増加します。
多くの金融機関では、返済額の急激な増加を防ぐために「5年ルール」(5年間は返済額が変わらず、6年目以降に調整される)や「25%ルール」(返済額は前回の1.25倍まで)といった上限が設けられていますが、それでも長期的には返済負担が増加するリスクは避けられません。
*金利低下時の変動金利の返済額シミュレーション
変動金利型住宅ローンのもう一つの側面として、市場金利の低下によって返済額が減少する可能性も考慮に入れることができます。
前述の例と同じく、借入額3,000万円、返済期間35年、当初金利0.6%(月々約84,788円、総返済額約3,561万円)のケースで、もし市場金利が低下し、適用金利が0.4%(-0.2%)になった場合、月々の返済額は約83,204円(-約1,584円)、総返済額は約3,494万円(-約67万円)となります。
さらに金利が0.3%(-0.3%)に低下すれば、月々の返済額は約82,410円(-約2,378円)、総返済額は約3,462万円(-約99万円)となり、返済負担の軽減が期待できます。
このように、金利低下局面では返済額が減少し、総返済額を圧縮できる可能性がある点は、変動金利型の大きなメリットと言えます。
*固定金利の返済額シミュレーション
固定金利型住宅ローンを選択した場合、契約時に定められた金利が返済期間終了まで、あるいは固定期間終了まで変わらないため、将来の金利変動による月々の返済額への影響はありません。
例えば、同様の条件(借入額3,000万円、返済期間35年)で、当初金利を1.2%として固定金利ローンを組んだ場合、月々の返済額は約100,541円となり、総返済額は約4,222万円となります。
この場合、たとえ将来市場金利が大幅に低下したとしても、月々の返済額や総返済額が変わることはありません。
逆に、市場金利が上昇した場合でも、返済額が増加することはないため、家計の管理がしやすくなるという安心感を得られます。
固定金利期間選択型の場合は、固定期間終了後にその時点での市場金利に基づき再度金利タイプを選択することになりますが、いずれにせよ、選択した固定期間内においては返済額の変動リスクは存在しません。
□まとめ
住宅ローンの金利タイプ選択においては、変動金利の持つ当初の低金利というメリットと金利上昇リスク、そして固定金利の持つ返済額一定という安心感と当初金利の高さという特性を理解することが不可欠です。
将来の返済額変動リスクを評価するためには、金利上昇・低下シナリオに基づいた具体的なシミュレーションを行い、家計への影響を数値で把握することが極めて重要となります。
どちらの金利タイプが最適かは、個人の収入状況、将来の見通し、リスク許容度、そしてライフプランによって異なります。
ご自身の状況を冷静に分析し、シミュレーション結果を踏まえた上で、長期的な視点に立って最も納得できる選択をすることが、賢明な住宅ローン計画の第一歩となるでしょう。





